次のページ
前のページ
目次へ
これは鋭い質問です。考えられる答は次の通りです。
- USA/CERL がアナウンスした意図は、組織内部では GRASS とその商用パッ
ケージ版を使用すること、GRASS のパブリックな Web と ftp サイトを自分たち
から完全に切り離すことにあった。そのために共同研究と開発についての契約を
下記の 3 つの企業と結んだ。
- the Environmental Sciences Research Institute (ESRI)
- Intergraph
- Logiciels et Applications Scientifiques (L.A.S.) Inc
最初の 2 社との契約では、GRASS のコンセプトを ESRI と Intergraph の商用 GIS
に組み込むことを奨励する、となっていた。3 つめの契約では、GRASS のコンセ
プトとコードを活かして、L.A.S. が新しい商用 GIS を開発するというものだ。
L.A.S はまたパブリック・ドメインな GRASS についても、引続き協力関係を持つと
している。それは L.A.S. が GRASS を将来性のあるシステムであり、L.A.S. の
GRASSLAND に役立つ可能性のある新しいアイディアやコードの情報源として認めて
いるからだ。ある観測筋によれば、最初の 2 つの契約は、Linux を Microsoft
に売り渡すようなものだ、と述べている。また L.A.S. によるこの試みは、パブ
リック・ドメイン版と商用版の 両 GRASS の共存についての興味深い実験だ、とも
述べている
- USA/CERL によって管理されていないと GRASS は衰退していってしまう、
という見方もある。 Open GIS Consortium がすべての開発者とユーザにとって利益
となるオープンなアーキテクチャとなるように業界をまとめあげていく、という見方
もある。また OGIS の活動は結果的には、ほとんど同じ内容だが(しかし共有する
ところがほとんどない)、ベンダー固有の「標準化」に終り、オープンな開発プラット
フォームとしての GRASS の役割は失われてしまう、という見方もある
- しばらくは各大学やサイトでの開発が行われ、それぞれの場所で GRASS を
維持していく。しかし、結局標準化が行われないまま「細胞分裂」状態に陥って
しまう。最終的にはそれぞれの場所では有用だが、外部では利用されない GIS
になってしまう、という見方もある
- 希望的観測として、USA/CERL が行ってきた運用モデルは、これから出てくる
新しいモデルの前身に過ぎないという見方もある。おそらく下記のような形だろう。
- 新しい主導組織のもとに入る。たとえば 航空宇宙局(NASA, National
Aeronautics and Space Administration)のような、地球観測システムで使える
ような画像処理システムを持つ、オープンでパワフルな系統立った GIS を必要と
している組織がそれにあたる
- ディストリビューション管理モデル。Linux のような?
- 混合モデル? おそらく Web 方式から発展して、usenet のグループに
ができあがる。まず comp.infosystems.gis.grass ができた後、
- comp.infosystems.gis.grass.academics
- comp.infosystems.gis.grass.publicservice
- comp.infosystems.gis.grass.commercialvalueadde
- comp.infosystems.gis.grass.commercialdistributors
- comp.infosystems.gis.grass.programming
- comp.infosystems.gis.grass.users
- comp.infosystems.gis.grass.centralcommittee
が開設される。
はっきり言って、ちょっと不真面目に書いたが、ここから真面目に。
この管理モデルでは、Central Committee がすべての開発とテストを指導する。
Central Committee は、教育機関、公共機関(政府、非政府機関とも)、商用版を
提供している企業、その他 GRASS に寄与している企業、プログラマ、ユーザの
代表者から構成される。その他の特定の目的を持つグループは、その内部でユーザ
組織を持つ。例えば Academics は GIS と GRASS の教育を担い、あわせて自分たち
の目的にあった GRASS の開発も主導して行なっていく。GRASS に付加価値を付ける
商用のデベロッパーは、彼らのビジネスに寄与する GRASS の開発を含む、自分たち
の目的にあった開発を主導する。Users は、協力しあって GRASS の学習を行ない、
バグとり、その他の作業を行う
GRASS は注目に値する下記の可能性を秘めています。
- 従来からある画像表示中心の GIS としても利用可能だが、科学的分析も行な
える。GIS の多くは地図製作を得意とするが、 GRASS ほど簡単かつパワフルに科学
的な解析を確実に行なえる機能を持ち合わせていない。元来 GRASS は、科学的な
研究、つまり環境の分析や公有地の環境管理と保護を目的として設計・開発された
ためである。ところで、Web で利用できる GRASS が 少なくとも 1 つ存在する。
GRASSLINKSという
カリフォルニア大学バークレイ校で開発されたシステムである。ユーザは Web の
フォーム上でコマンドをサーバに送り、その結果が gif 画像で Web ページに表示
される。今後もっと機能が上がると思われる。
- 教育手段として有効。GRASS は他の GIS と比較して、教えやすく学びやすい。
他の GIS はソース・コードも配布されず、不思議なブラック・ボックスであるのに
対し、簡単に修正することができる(「地理学」の一環として学ぶというよりも、
コンピュータ・サイエンスとしての GIS を学ぶのに適している)。もちろん学生に
とっては、他の GIS に比べて手軽に手に入れられるのも魅力である
- GIS を利用した応用研究と開発に優れている。GRASS を以前から使用している
大学は数多くある。ソース・コードが手に入り、簡単に修正が行なえ、スクリプト化
も容易、etc といった利点があり、この点で同様なシステムに対して決定的に優位に
立っている
- 広く利用可能。さまざまなアプリケーションから GRASS を科学的な分析が
可能な GIS として利用できる。いくつもの UNIX ワークステーションの GIS パッ
ケージとして確固たる地位を維持し続けるだけのことはある。UNIX ワークステー
ションに Linux が含まれるなら、さらにその価値は上がる(Linux だけに限定し
ているわけではない)
- GIS の研究と開発に向いている。例えば、異なるデータ・モデルを試して
見たくなったら? GRASS に追加してしまえば OK!
- 商品化もできる。このドキュメントは商用版の GRASS についての情報を含ん
でいる。その企業(たぶんここで紹介されていない企業も?)は、製品に対するあなた
の改良やサポートを歓迎するだろう
この管理モデルにおいて、誰が Linus Torvelds 氏の役目をするのでしょうか?
おそらく個人ではないと思います。10 年近く GRASS に関わってきましたが、
科学的なデータ管理と GIS 環境で、私が満足できた GIS は GRASS だけです。
本当のところ GRASS が UNIX を勉強しろ、と強制するまでは、ユーザフレンドリ
とはいえない UNIX を敬遠してきました。古くからの GRASS の開発者たちの中
には今でも GRASS 関連の活動を熱心に行っている方もいて、オープンな GRASS
がしぶとく生き残るところを見たいと思っています。新生 GRASS がたくさんの
愛好家を引き付けるようになれればと。このようにして、共同体としての
「Central Committee」というコンセプトが、よりオープンな運用・開発スタイル
へと GRASS を導いていくのではないでしょうか。
早い話が、Linux コミュニティがその傘下に「キラーアプリケーション」を従わ
せることができるチャンスなのです。パブリック・ドメインである現在の GRASS は
Linux の権利形態とわずかに異なります。しかしそれは議論すればいいはずで...
意見をお寄せください!
次のページ
前のページ
目次へ