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2. はじめてみよう

2.1 X ウィンドウシステム:その歴史と構造様式

X ウィンドウシステム 、DEC との共同研究で、Athena プ ロジェクトの一環として MIT(マサチューセッツ工科大学のコンピュータ サイエンス研究所で開発され、 1984 年に初めて発表されました。開発の先頭 にたったのは Robert Scheifler で、最初の X は スタンフォードの Paul Asente によって開発された "W" というウィンドウパッケージに負うところが 大きいものでした。1987 年 9 月、MIT は今日われわれが知っていて使用して いる X11 の最初の版を発表しました。X11R2 以降、管理は MIT から1988年1 月に発足した X コンソーシアムに移行しています。

X ウィンドウに盛り込まれたたくさんのアイディアもまた、70 年代後半の PARC の予言者たちのように、コンピュータに関わる仕事をしていた Xerox 社の パロアルトリサーチセンター(Palo Alto Research Center,PARC)の 研究に由来するものでした。これらのコンピュータは売りものになるものはほ とんどありませんでしたが、Xerox が Smalltalk 80 を動かすために構築した ウィンドウシステムを実演した時、人々はすっかりとりこになってしまいまし た。WIMP (複数のウィンドウ、アイコン、メニュー、ポインタ)インターフェー スを実演した 3 種類のコンピュータのシリーズは大変すばらしいものだったの で、ほとんど一夜にして革命を引き起こしてしまいました。数年のうちに多く のコンピュータユーザはウィンドウ操作システムの味をしめ、もはやあと戻り はできないと言うようになったのです。

現在では X コンソーシアムが X ウィンドウの開発・配布を行っていますが、 自由なライセンス制度があるのでフリーのものや低価格のものがあります。 Linux で使われている X のバージョンは、XFree86 で、XFree86 は イン テル x86 プラットホーム上での UNIX 類似の OS 類のための X サーバコレク ションです。この仕事は、x386 の時代に由来しており、そのほとんどは、 X11R6 以降に戻って配布されました。事実上、別の X サーバを使わないなら、 XFree86 は Linux の X ウィンドウになるべきものだと考えて良いでしょう。

X ウィンドウは多くのツールキットとライブラリ群からなりたっています。そ れは、X Toolkit Intrinsics と Athena Widgets からなるものです。多くの プログラムは XView と Motif ツールを使用しています。さらにウィンドウ操 作やコミュニケーションシステムを統合した GNOME や KDE のような新しいも のもあります。お使いの多くのプログラムがコンパイルしなくてもよい、ある いは不思議で不可解なエラーを出すなら、正しく X をインストールしたかど うかを確かめたと思うかもしれません。なぜなら、これらほとんどのライブラ リ( Motif を除いて)はフリーのもので、お使いのシステム上で X とともにプ レインストールされるからです。

覚えておいてください。X Window であって、X Windows ではありません。

(校正者註: X Consortium が要求する名称は man X の出力にある通り「 X, X Window System, X Version 11, X Window System, Version 11, X11 」のい ずれかなのですが、原文の表記を尊重し X の呼称については変更しません)

2.2 デスクトップの解剖

X をもっとわかりやすく使うために、知っておいたほうがよい基本的な原則 と用語がいくつかあります。これらの用語は必要なときにはいつでも使えるマ ニュアルページやヘルプファイルのなかに繰り返しでてきます。

スクリーン(screen) は、お使いの "デスクトップ(desktop)" 全体の ことですが、その言葉は 2 つのものをどちらも指すように使われているかもし れません。技術的に言うと、まずはあなたが X を見ているビデオディスプレ イのことを指し、あなたはひとつ以上のスクリーンを見ることができます。実 際、ひとつの X サーバも走らせていない 1 台のコンピュータよりももっと多 くを見ることができます。これはこの文書で書く範囲を超えたことですが、違 いはわかるはずです。

ルートウィンドウはお使いのスクリーンの背景のことです。名前だ けウィンドウと呼ばれていますが、他のウィンドウのように働くわけではあり ません。ルートウィンドウでアプリケーションを動かしたり、あるいはその上 に絵を貼り付けたり、あるいは単にある色で塗りつぶすこともあります。

ウィンドウマネージャーは X ウィンドウシステムとユーザ間でのメイ ンインターフェースです。ウィンドウマネージャーがないと、システムを使うの はより難しくなり、たぶん生産的なツールにはならないでしょう。ウィンドウ マネージャーはウィンドウ枠、メニュー、アイコン、さまざまなデスクトップ、 ボタンバー、ツールバーなどをユーザがカスタマイズできるようにし、場合に よっては作業中にその機能を追加して、より機能的なものを提供します。

ポインターとは矢印のことですが、スクリーン上で対応するマウス (あるいは別のポインティングデバイス)の位置を表す何かきまった形の印です。 ポインターはしばしばスクリーン上のその位置で、マウスを使えば引き起こさ れるさまざまなことに関してあなたの注意をうながすために形を変えます。

ウィンドウは、ウィンドウマネージャーによって "管理されている" さ まざまなアプリケーションに与えられている窓わくのことです。これにはいわ ゆるルートウィンドウ以外のこまごましたものを含んでいます。フレームやタ イトル、あるいは通常の枠を持たないウィンドウ類でさえ、ウィンドウマネージャー によって管理されています。アクティブウィンドウというのは、現 在使用しているウィンドウのことです。入力したテキストを受け取るウィン ドウであり、これはいつもそうであるとは限らないのですが、伝統的にマウス カーソルがそこにあるということでわかります。アクティブウィンドウは "フォー カス"になっていると呼ばれ、使ってないウィンドウは"アンフォーカス"であ ると言います。

メニューアイコンは、別のウィンドウシステムでの動 きと同様に X でも動き、同様の一般的な原則が適用されます。テキストのみ のウィンドウはターミナルエミュレータと言われ (たとえば xterm がそうです) 、これらは基本的にテキストのみをディスプレイにエミュ レートしますが、複数の仕事をこなし、同時に 1 つ以上を使用します。さら に X で利用できる多くの利点を持っています。 この件についてはあとの章 で述べます。

2.3 X ウィンドウを起動する

X を起動するにはいくつかの方法があります。お使いのシステムで自動的に起 動するように設定できるなら、このセクションを読まなくても良いでしょう。 しかし、ほとんどの Linux システムは、いまのところは、ログインしたらコ マンドラインで起動しますから、あなたは自分でこれを解読しなければなりま せん。

X を起動するもっとも基本的な方法は xinit です。これは、 ウィンドウマネージャーを持っておらず、デフォルトではデスクトップの空いた 場所に開きます。クライアントプログラムがコマンドラインで特定されていな ければ、xinit は、シェルスクリプトとして実行してクライアン トプログラムを起動させるために .xinitrc ファイルを探します。このファ イルがなければ、xinit はデフォルトで次のようなコマンドを使い ます。

 xterm -geometry +1+1 -n login -display :0
 

ごらんのように、これはあまり親切なものではありません。X を起動するもっ とも普通の方法は、startxというコマンドで行います。これはウィ ンドウシステムを起動するもっとも一般的な形ですが、テキストシェルから入っ て、自分でウィンドウシステムを起動します。多くの Linux ユーザにとって これが X を起動するもっとも普通の方法で、それがもっとも自在な方法なの です。次のようなコマンドを使うことができます。

 startx -- -bpp 8    #start x in 256 color mode
 startx -- -bpp 32   #start x in true color mode
 

2 つ続くダッシュ(--) はxinit に直接に数値を渡し、これであなたが求める 解像度で X を起動できます。さらに設定ファイルを使う方法についてはこの 文書の最後で述べます。

2.4 X ディスプレイマネージャー

xdmというプログラムはユーザをシステムにログインさせ、基本シェ ルを起動する gettylogin と同様の働きをします。 xdm で X を起動すると、見慣れたプロンプトでユーザはユーザネー ム(username)とパスワード(password) だけを入力します。そうすればユーザ は直接的にグラフィック環境に入ります。このようなやり方はシンプルで簡単 にできますから、大学やサイバーカフェやビジネスの分野、あるいはある広い 範囲で Unix を知る必要のないユーザがいるところでときどき見かけます。

xdm はお使いの Linux システム上の /usr/X11R6/lib/X11/xdmにある設定ファイルで設定することができ ます。xdm-config というファイルはログインスクリーンがどのよう にユーザに現れるかについての設定をします。そして、Xsetup_0は、 X が起動するときにどのようなプログラムを配置したら良いかを xdm に知ら せるために使います。 xdm が標準として使われるなら、 一般のユーザについ てについての設定は.xinitrcファイルに書くのも良いでしょう。

以下のものはお使いのシステムの設定の参考になるかもしれない Xsetup_0 ファイルの例です。xfstt というプログラムは、 TrueType フォントサーバで、この文書のあとの章で述べられています。また、 ここでシェルスクリプトを使っていることに注意してください。ちょっと素敵 な画像(モノクロの背景のかわりに)をバックグラウンドに設定するために xv を呼び出します。もしうまくいかないなら、 xsetroot が呼びだされ、少なくとも背景を素敵なブルーに設定するようにします。

 #!/bin/sh
 xconsole -geometry 480x100-0-0 -daemon -notify -verbose -fn \
 '-schumacher-clean-medium-r-*-*-10-*-*-*-*-*-*-*' -exitOnFail
 /usr/X11R6/bin/xfstt &
 /usr/X11R6/bin/xv -quit -root                               \
 /usr/local/share/WindowMaker/Backgrounds/InDreams.jpg       \
 || xsetroot -solid darkblue
 xset fp+ unix/:7100
 

多くの Linux ディストリビューションはこの処理を自動的に行います。もし お使いの Linux システムのランレベルを見ることができる場合、起動してそ のまま xdm などが立ち上がらなければ、ランレベル 3 が通常の起 動であることが分かるでしょう(/etc/rc.d 以下を参照)。 xdm が立ち上がる場合には、ランレベル 5 で起動しています。 これは Linux (および類似の)システムの標準のようなものです。 linuxconf やこれと同じ機能を持つプログラムは、この設定を行え るはずです。

新しい Linux システムの多くは、gdmkdm といったプ ログラムがあります。これは xdm に対応する GNOME や KDE のプロ グラムです。基本的には、これはデスクトップのルック & フィールをユー ザの好みに合わせて変えるだけですが、このような別バージョンのプログラム はもっと多くの機能を持つこともしばしばあります。例えば、最後にログイン した時のデスクトップ環境を記憶することや、コンソールからシャットダウン や再起動を行う機能などです。


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