この章にはユーザーエージェントプログラム (Mail User Agent: MUA) に関する情報が含まれています。 これはユーザが目にし、用いるソフトウェアです。 MUA が実際にメールを送るには、 メール配送エージェント (Mail Transport Agent) が必要です。 こちらは Mail Administrator's HOWTO の方で解説されています (user=agent の設定や、管理者向けのトラブルシュートのツボなども 記述されています)。
MUA はメールの編集用に、何らかのエディタを呼び出します。 どのエディタがデフォルトになっているかは場合によって異なります。 ほとんどの MUA は、古い時代から存在する Unix の慣例を尊重しています。 環境変数 VISUAL が定義されていれば、その内容をあなたのお好みの エディタの名前とみなすのです。 VISUAL が設定されていない場合は、 環境変数 EDITOR が用いられます。
EDITOR には `vi' または `emacs' を設定するのが一般的です。 しかしもしあなたが (私のように) ずっと emacs を動作させ続けている ような人なら、 EDITOR は `emacsclient' にしておくのが一番便利な やり方でしょう。同時に自分の .emacs ファイルには 以下の行を設定しておきます:
(autoload 'server-edit "server" nil t) (server-edit)
emacsclient プログラムは、既に動作している Emacs の実体との 接続を確立しようと試み、メールメッセージの一時ファイルをその Emacs に渡して編集させようとします。この結果として、 メーラがエディタを呼び出すと、使っている Emacs にメールの 編集ウィンドウが開きます。
ファイルをメーラに返して送信させるには、 C-x # とタイプします。 メールバッファが閉じ、メーラが呼び出した emacsclient の実体が 実行から戻り、制御がメーラに戻ります。
一度に複数の emacsclient を起動することもできます。これによって Emacs が混乱することもありません。しかし emacsclient セッションの 最中に他の Emacs を呼び出してしまうと、 emacsclient を混乱させ、 どちらの Emacs にも接続できなくなるようなことも起こりえます。 こうなってしまったら Emacs を全て閉じ、一つだけを再び起動しましょう。
これは私が使っているものです。お勧めします。 mutt は elm の子孫で、 デフォルトでは似たようなコマンド構成になっています。しかし mutt は ずっと強力で、ずっと柔軟な設定ができます。 mutt は POP3 および IMAP のクライアントになることができ、 MIME と PGP にもみごとに 対応しています。 Mutt home page は http://www.mutt.org にあります。
mutt は EDITOR/VISUAL の慣例を尊重します。
elm は、 Unix では初めての、モダンなスクリーン指向メーラでした。 しかしもう長いこと開発も滞っており、 mutt にその座を譲っています。 elm には POP3 サポートが組み込まれているバージョンもあります。 詳しい情報は、 elm のソースと Metalab の MUA ディレクトリ にあるインストールの説明を見てください。 つまづきやすい点が解説されています。
残念ながら elm はそのままでは PGP を扱えません。 PGP サポートパッチも ありますが、 mutt の PGP サポートの方が優れています。 PGP を使いたい人には mutt の方をお薦めします。
elm は EDITOR/VISUAL の慣例を尊重します。
pine は初心者向けに設計された MUA です。 ニュースリーダとしての機能が組み込まれており、 IMAP リモートメールプロトコルも最初からサポートしています。 私個人としては、コマンドセットが少なく、設定できる幅も小さく、 組み込みのエディタが気に入らないので使っていません。 でも、組み込みの IMAP サポートは素晴らしいものです。 調べてみたい場合は、 http://www.washington.edu/pine から配布物を取得しましょう。
pine は EDITOR/VISUAL の慣例を尊重します。
Netscape ブラウザは POP3 と IMAP リモートメール機能を組み込みで 備えています。したがって MUA としても用いることができます。 でもお薦めはしません。これは MUA 専用のものではないので、 MUA が持つべきサービスの多く (例えばエイリアスや PGP の扱いなど) を備えていないからです。
Netscape には自前の小さなエディタがついてきます。 ブラウザで使われるもの (form のテキストフィールド用のもの) と同じやつです。
Emacs には smail と呼ばれる、メールの送信ができるモードがあります。 また rmail と呼ばれる別のモードでメールを読むこともできます。 smail モードは使いようによってはとても便利です。 Emacs 環境の 内部でメールを書くことができますからね (でもこの文書の 前の方にあった emacsclient の議論も参考にしてください)。
一方、 rmail モードの方はお薦めできません。
これは起動される度に inbox を BABYL 形式に変換してしまうんです。
普通のメールツールはこいつを扱うことができません。
(もしこの変換をやってしまった場合は、 Emacs のコマンドラインで
M-x unrmail
してください。)
`vm' と呼ばれる Emacs 用のメールリーダも存在します。これは 標準的な V7 メールボックスを読み書きできます。これは GNU Emacs と一緒には配布されていませんが、 http://www.wonderworks.com/vm/ にあるホームページにあります。
Emacs の smail/rmail/vm は EDITOR/VISUAL のルールを 無視します。代わりに、 これらが埋めこまれている Emacs を使うことになります。
Linux や最近の Unix のシェルから単に `mail' と打つと、 おそらく BSD Mail プログラム (の何らかの派生版) が起動されることになるでしょう。 BSD mail は行指向の インターフェースを持っています。これはもともと TTY で用いることを想定して設計されたものです。現在では 歴史的な興味以外は持たれていません。
BSD mail は EDITOR/VISUAL の慣例の先例となったものです。
以下も Linux で動作することが知られています。 入手先は `archie' で見つけてください。
著者は mh や mush について、ここで詳述できるほどよく知りません。 いずれもどちらかというと複雑なインターフェースを持っていて、 スキルの高いメールユーザ向けに設計されたものです。
訳注: 日本国内でポピュラーな MUA に関しては、 「日本の Linux 情報」にある Linux 関連リンク/ネットワーク のページを参考にすると良いでしょう。