次のページ 前のページ 目次へ

2. ハードウェア

2.1 「最小」構成

必要最小構成は、たぶん、386SX/16MHz, 2MB RAM, 1.44/1.2MB フロッ ピー、グラフィクスボード(この他、もちろん、キーボード・ディスプレ イなど)です。これで、起動して動作するかどうかを確認できるでしょ うが、実用的な「仕事」は何もできないでしょう。

何か「仕事」をさせるためには、最小構成(重要なコマンドと通信ソフト などの多少のアプリケーション)を考えて、5〜10MBのハードディスクが あればいいでしょう。しかし、これでも、できることは『かなり』限ら れていますし、快適とは言えないでしょう。このような構成は、お奨め できません。

2.2 使える構成

計算資源を使うようなプログラムを使う場合には、もっと速いCPUが 欲しくなるでしょう。例えば、gcc・X・TeX を使う場合です。ただし、 忍耐強い人なら、遅い CPU でも我慢できるでしょう。

実用的な必要メモリー量は、X-windowを使わないなら 4MB、使うなら 8MB でしょう。マルチユーザーで使ったり、大きなプログラム(コンパイラな ど)をいくつか同時に使うなら、それ以上のメモリーが欲しくなるでしょ う。それ以下のメモリーでも(たとえ2Mでも)ハードディスクを仮想メモ リーとして使い、動作させることはできますが、遅すぎて実用的でないで しょう。

必要なハードディスクは、普通のユニックスユーティリティー類・シェル・ 管理ソフトだけなら、10MBあればユーザー領域も少しだけとれるでしょう。 しかし、もう少し整った実用的システムが欲しいなら、Slackware・MCC・ TAMU・(バージョン1が期待されている)Debian・Linux/PRO のいずれかを 入手してみてください。これらの場合、何を入れるによって、60MB から 200MB のディスクが必要になります。これにユーザー用の領域を足したも のが、実際に必要なディスク量です。最近の値段を考えると、あまり小さ いのを買うのもどうかと思います。最低でも 200MB 以上のハードディス クを買ってみてください。決して後悔しないでしょう。

あとは、「何を望むか・予算はあるか」に応じて、メモリー・ディスク・ 速いCPUを選べばよいでしょう。

わたし(山崎)が個人的に奨めるのは、ノートPCなどで X-windowを使わな いなら、「386 +4M RAM +80 HDD +VGA」以上です。最近のサブノート でも、この条件をクリアできるでしょう。なお、レジューム機能は使え るものと使えないものがありますので、購入前に確かめたほうが良いと 思います。この構成でも複数の仮想コンソールで漢字も使え、文書処理 用の TeXの表示や、印刷用に広く使われているポストスクリプト言語で 記述された図や文書、各種形式の画像ファイルの表示もできます。さら に、グラフを書くのに便利な gnuplotも使えます。据え置き型のPCなら、 X-windowを使うことを考え、「数値演算コプロセッサ付きCPU +8M RAM +200M HDD +速いラフィクスボード(S3 など)」以上でしょう。マウス はMouse Systems 互換の3ボタンマウスがお奨めです。なお、ノート ブック型PCでX-window を動作させるにもこの程度の RAM や HDD がある 事が望ましです。その場合、マウスの代わりになるトラックボールや棒 状のポインティングデバイス、感圧パッドなどが付いているとたいへん 便利です。

さらに、最近の価格動向を見ると、携帯型では「SL Enhanced 486 +8MB RAM +200MB HDD」、据え置き型なら「 Pentium +720MB HDD +17"ディ スプレイ +16M RAM +S3の64ビットチップを使ったグラフィクスボード」 あたりを狙うのがよいかと思います。前者なら手軽に運べる UNIX 互換 環境が、後者なら、30〜40万円程度の投資で100〜200万円程度の売れ筋 ワークステーションに負けない性能が期待できます。サブノートのメモ リーを16MBやそれ以上にして、「コーヒーショップでX」もオツなもの です。

なお、メモリーを増やすことは高速化に大きく貢献します。ハードディ スクを使った仮想メモリーは遅いですし、メモリーの余った分は、必要 になるまで、ディスクキャッシュとして活用されます。とくに、ノート ブック型などの場合はハードディスクへのアクセスが減るために節電に も効果的です。MS-DOSなどとは違いメモリーは有効利用されますのでな るべく多く用意しましょう。

2.3 サポートされているハードウェア

以下に、サポートされているハードウェアを挙げます。このリストは、 概況を知ってもらうためのもので全てを網羅しているわけではありま せん。なお、Amiga や FM-TOWNS 版の情報などはほとんど含まれてい ません。また、ハードウェアに関する詳しい情報は、JFプロジェクト JFプロジェクト( JFプロジェクト節参照)で翻訳 された Hardware Compatibility HOWTOなどのHOWTO シリーズの文書群 ( HOWTO 文書群節参照)を御覧ください。

CPU

386 のプロテクトモード用プログラムを実行できるもの。全ての386, 486, Pentium はこの条件を満たしていますが、286はだめです。 286 には今後も対応しないでしょう。この他に、Amiga/Atari の 680x0 でも 動作しています。68020+MMU・68030・68040が使えます。 更に、 ALPHA/AXPでは利用者環境のテストがはじまり、PowerPCやMIPSなどでも 開発環境が動作し始めたようですが、移植作業の段階と言えるでしょう。

バス

ISAやEISAはもちろん、VLバスや PCIバスなどでも問題ありません。 PCIの自動設定(Plug and Play)への対応もかなり進んでいます。PS55の 一部などで使われているMCA でも動くのですが、使えるディスクコント ローラなどが限られています。PCI関連の情報をまとめた文書としては、 PCI-HOWTO があります。 PCMCIA 関連は、Ethernet・モデム・SCSIコントローラ・メモリーカード の幾つかが動作確認されています。PCMCIAカードの差し替え時にカード を自動認識して初期化するpcmcia-csドライバがPCMCIAボードを動作させ るためのモジュールとともに配布されています。 cb-iris.stanford.edu の pub/pcmciaか、国内の、 nuis.nuie.nagoya-u.ac.jp の /Linux/pcmcia/に 置いてあります。tsx-11などにも置かれ始めたようです。 サブノート用のTP230キット( 機種別版のftpによる入手節参照)には関連ソフトもまとめられ ています。くわしくは、PCMCIA-HOWTOを御覧ください。

RAM

1GBまで対応しているはずですが、たぶんテストはされていません。 万一、メモリー増設で遅くなった場合には、キャッシュの問題でしょう。 マザーボードの説明を読んで、RAM全体がキャッシュさるように設定し、 それでもだめな らキャッシュを最大限まで増設してみましょう。なお、 64MBを越えるメモリーを使う場合には、Linux起動時にパラメータを渡す 必要があります。これは、PC の BIOS の仕様による制限です。

ディスク・テープ

一般的なAT用のドライブ(16bit IDE, MFM, RLL)は、サポートされてい ます。XT用の8bitコントローラー(MFM, RLL)もOKです。Enhanced IDE (E-IDE)のハードディスクやCD-ROMなどは、最近のカーネルを使う必要 があります。540MBなどの大きなIDE HDD(E-IDEでないもの)はカーネル にLILOなどでパラメータを渡せば全体が使えます。

これらに加え、下記のSCSIコントローラーにつないだハードディスク・ CD-ROM・テープドライブ・HPやSankyoのスキャナがサポートされています: Adaptec 1542/ 152x/ 1740 /拡張モード(1542互換モードではない)2742/ 2842・BusLogic (ISA/ VL/ EISA/ MCA/ PCIの各種製品に対応するはず で、455S/ 747S/ 946C/ 956Cでテスト済み)・QLogic (ISA/ VL/ PCMCIA) ・Seagate ST-01/ ST-02・Future Domain TMC-88x シリーズなどの TMC950 チップを使ったもの/ TMC1660, 1680, 1650, 1670,TMC3260/ 7000FASST・ Ultrastor 14F/ 24F/ 34F・Western Digital wd7000 ・NCR 5380 や 53c7xx/8xxチップのもの・Pro Audio Spectrum/ Studio 16・Trantor T128/ T128F/ T228 ・DPT PM2011B, 2021A(以上ISA)/ PM2012A, 2012B, 2022A, 2122A, 2322A(以上EISA)/ PM2024, 2124 (以上PCI) が標準カーネ ルでサポートされています。また、Adaptec互換機種ではBusLogicのコン トローラやDTCの3292(3270はダメ)も動作確認されています。 これらに 加えて、日本では SPC 用ドライバーが書かれていますし、これをつかう とダイナブック用の Dynamic SCSI も動作するそうです。また、パラレル ポートに専用のケーブルで SCSI機器をつなぐだけの EasyHard もありま す。詳しくはSCSI-HOWTOを御覧ください。

IDE・E-IDE・SCSI 以外にも以下の専用インターフェースの機器が動作します。 先ずはCD-ROM。SoundBlaster / 松下 ことぶき/ Panasonic(これらは PhotoCDも使え、4枚のコントローラで最高16台接続可)・Mitsumi (PhotoCD は試験中)・Sony CDU31A, 33A (PhotoCDもOK)/ CDU-535,531・ Philips / LMS・Aztech CD-ROM CDA268-01A, ORCHID CD-3110, OKANO/ WEARNES CDD110。 また、QIC-02・QIC-117ドライバーもあります。QIC-80テープを使うドライ バーも現在テスト段階ですが動いています。以上、CDROM-HOWTOなどを御覧 ください。

グラフィクスボード

まず、フリーソフトのみを使う場合の話をします。 テキストモードでサポートされているのは VGA, EGA, CGA, と Hercules (互換品を含む)です。グラフィクスや X-window は、VGA, Super VGA( ET3000/4000, Paradise, Trident, ATI, S3, Chips&Technology, Cirrus, Compaq AVGA, WD, Genoa, AGX, OAK, Advance Loic, MX, Video7), 8514/A, P9000, Herculesです。このうち、高速描画支援機能を持ったアク セラレータをサポートしているのは、S3(911, 911A, 924, 801, 805, 805i, 928, 864, 964, Trio64, Trio32, 868, 968)と、IBM 8514/A (ATI などの互換ボードを含む) ・ATI (Mach8, Mach32, Mach64)・ Cirrus( 5420, 5422, 5424, 5426,5428, 5429, 5430, 5434, 6205, 6215, 6225, 6235)・Western Degital(90C24, 90C24A, 90C31, 90C33)・IIT ( AGX-014, 015,016)・Tseng (ET4000/W32, W32i, W32p)・Weitek (P9000) ・Oak (OTI-087)です。なお、X-window には、基本的に XFree86 というPC UNIX 汎用のフリーのシステムを使っています。最新の全体版 は、8月はじめに公開された XFree86-3.1.2 です。S3/868,968やATI/Mach64のアクセラレータ、最近のノートPCで よく使われているChips&Technologyのチップなどにも対応してい ます。

別の選択肢もあります。Metro Link Inc.からは「Metro-X」が、X Inside Inc.からは「Accelerated-X」が、それぞれ Linux用にも発売されています。 どちらも、S3の864 / 964やATIの Mach64 はもちろんXFree86ではサポート されていない Matrox社のボードや Number9の Imagine128まで含んだ最新 のボードに幅広く対応しています。連絡先は、

       Metro-link Inc.:
         Tel:            +1(305)938-0283         FAX: +1(305)938-1982
         Email:          sales@metrolink.com
         Mail:   4711 Notth Powerline Road, FOrtLauderdale, FL 33309, USA

       X Inside Inc.:
         Tel:            +1(416)762-3778         FAX: +1(303)470-5513
         Email:          sales@xinside.com       info@xinside.com
         FTP:            ftp.xinside.com (199.120.247.2)
         Mail:   7900 E Union Ave, Suite 1100, Denver, CO 80237, USA.

ネットワーク

Western Digital 80x3/SMC Elite 16(標準原器)・ SMC Elite ULTRA ・ NE1000, NE2000・ HP PCLAN/ PCLAN+・3com 501 (なるべく避けよう), 503, 509, 579(EISA)・Allied Telesis AT1500 (日本名は HE4000)・ NE2100(AMD Lance や PCnet-ISA/VLB/PCI、Boca PCI)・Cabletron E21xx・DEC DEPCA, DE100, 200, 201, 202, 210, 422(EISA) /EtherWorks3(DE203, 204, 205)/DE 425, 434, 435 (他社の PCIの製品にも同等品が多い 例:SMC Ether Works), 500・Apricot Xen-II、 ポケットアダプターでは、D-link DE600, DE620 と AT-LAN-TEC/RealTek、 ノートPC内組み込み型ではZenith Z-note のものがサポートされ、SLIP, CSLIP,PLIP (Parallel Link IP) も標準カーネルで対応しています。更に、 多数の NE2000 互換ボードの動作確認がされていますが、互換性が不十分 な物も多いので気を付けてください。AT-LAN-TEC の OEM のポケットアダ プターは非常に多くの名前で売られています。更に、試験的に、3com 505, 507・Allied Telesis AT1700・Intel Ether Express・NI5210・NI6510・ Ansel Communication EISA 3200用ドライバなども標準カーネルに付属し ています。少し変わったところでは NCRなどから出ているAT& T GIS のWaveLAN(無線LAN)も動きます。 一部の PCMCIA カードも動作しています。 具体的には D-link DE650 ・ 3Com 589 ・IBM製です。イーサーネットに 関して詳しくは、JFの里( 入手方法 節参照)に日本語訳もある ETHERNET-HOWTOや、カーネルのソースコード のネットワーク関連の部分 (/usr/src/linux/drivers/netにある)の コメントなどを御覧ください。

サウンドボード

Adlib・SoundBlaster1.0/2.0/Pro/Pro2・ProAudio Spectrum 16・Gravis Ultra Sound16, Ultra Sound MAX・ MPU-401。 上位互換の新製品もたくさん出ていますが、大抵動いているようです。 また、1.3シリーズのカーネルに付属の物は対応ボードが一層増えていま す。詳しくは、カーネルパッケージに含まれるサウンドドライバー(他の OSでも使われはじめたのでVoxWareと名付けられた)に付属の文書や Sound-HOWTOを見てください。VoxWareの開発版は単独でtsx-11などに置 いてあります。

シリアルボード

AST Fourport cards(with 4 serial ports)・Boca のいくつか・Usenet Serial Card III。

マウス

大抵のシリアルマウス・バスマウス(Microsoft, Logitec, PS/2, ATI)・ TI travelmate(C&T82C710) Quickport マウス。

その他

この他にも、SCSIでなく専用のI/Fを使うスキャナやデータ収集用の ADコンバータ、ジョイスティック、ビデオ取り込みボードなど動作 するハードウェアはいろいろありますが、専用のソフトやパッチが 必要です。


次のページ 前のページ 目次へ